正しい人の喰い方マニュアル -9ページ目

アステカ文明の人喰いについて考察

週末アステカ文明に詳しい山瀬氏からメールを頂いた
山瀬氏は多数の歴史関連書籍を執筆しているのみならず
英国の紳士録にも記載されている著名な方である

別途新エントリーにアップしたので、
興味のある方は是非覗いていただきたい
メールの内容を総括するに

つまりは

アステカには二種類の生贄が居た

ということであり
一般庶民が食べるといった事は無かったようだ
イメージ的に生贄の心臓が捧げられると
一般庶民が鍋カマ持って神殿に押しかけ
人肉を食べていたような物があったが
それは大きな間違えで
食べていたのは本当に一握りの特権階級の人たちだけであったようだ。

幾つかの参考図書も教えて頂いたので
これは近日中読んで書評なりコラムの形で公開したいと思ってる

山瀬氏よりのメール

>アステカでは一般人が人肉を食べる習慣は無かったとかかれていますが
>神殿ではあったのですよね。
>神官が心臓を食べていた。


これは間違いやすいことですが、アステカ社会では人間を食べるのは、
年に何回か行われる祭りの時に神殿で生け贄にされた人間のことであ
り、普段から豚小屋のような人間飼育所みたいなものを作って日常の
食用に人間を飼っていたということではありません。

>インターネットでちょこちょこ調べていたのですが
>食べていたのは神官だけではなくて一般人も食べていたのですか?
>功労者には心臓と脳を与え……というのは本当ですか?


基本的には神官の特権事項ですが、例外はいくらでもあります。各都市の
王はその都市の最高神官でもありましたから、食する機会はありましたし、
捕虜を生け贄にした場合は、戦いの功労者や戦闘指揮官クラスにも機会
はありました。田舎の町でも生け贄は小規模ながら行われ、こういうところ
で行われた場合、多くの平民が神の恩恵に授かるため人肉を分けてもらう
ことはあり得ますが、一番いい場所は神官達や神が持って行ったのはいう
までもありません。

メキシコの古代文明では魂という概念がはっきりしておらず、魂とは心臓で
あるとかいうような考えや、魂=生命のエネルギーは血であるとか、すなわ
ち魂は物質でもあるという考えがあったわけです。まあ、キリスト教の一歩
手前の宗教であるユダヤ教でも、モーゼが牛の血を人民に振りかけて神と
の契約の証だとかいったとかありますよね。こうした脳とか血などの生命を
司ると考えられる部分が、神聖なものとして優先的に食されたのは当然と
いえます。

>犠牲者を両方から二人の男が押さえ付けて跪かせ、もう一人の男が頭を押さえ
>て仰け反るようにします。その首の下に、流れる血を受ける皿を持つ役の者が
>つき、首を掻き切ります。血をこぼさないように全て受けきると、今度はすみ
>やかに解体が始まります。

>首を切断し、内蔵を取りだし、身体をヘソの上くらいから二つに切り分け、さ
>らに腕、足、背骨から左右、という具合に切り分けます。
>それをさらに小さく捌いて、参加者全員に分配します。
>生贄としての解体の場合は、心臓は神に捧げられました。
>他、1番の功績を認められた者の褒賞として、与えられる場合もありです。心
>臓と脳みそは特別な物とされたようです。

>この犠牲者を切る方法は有名ですが
>山瀬さんの見解としてはどうなのでしょう?
>これは誇張された内容なのでしょうか?


正しいですが、この前に書きましたように、ここでいわれている参加者と
は神官や神官を兼任する実力者達ばかりですよね。
手柄でも立てない限り、平民がこのような神聖な場所に行けるわけはな
いことは容易におわかりでしょう。

>また

>生贄になる人は神の擬人であって、崇拝され、病気を癒し、人々に祝福を与え、
>つねに、そのそばには彼の世話をする弟子たちがいた。それから彼は殺され、
>彼に与えられていた特別な家(calpulliと呼ばれていた)でばらばらに解体さ
>れた。育児中の母親たちは、その血を子どもに含ませた。


これは、年間行事としての生け贄ですね。選ばれるあるいは志願して生
け贄になる者は、生け贄の日まで神として扱われ多くの召使い達を持つ
ことができました。神のための犠牲は崇高なことと考えられていたので、
美女・美男あるいは何かしらの才能のある人を選んだことが多く、こうし
た名誉を喜ぶ人もいたんです。最初の方でアギラールというスペイン人
の話を出しましたが、彼の船が難破したとき仲間達がマヤ人の捕虜とな
って生け贄にされたのは、珍しい人間だから神が喜ぶだろうと「選ばれ
た」訳です。

ところで、はて、カルプリと書いていましたか?カルプリは共同体そのもので
すが?何を参考にされたのかな?


>しかし山瀬さんの書籍には侵略者は捕虜にされると心臓を割かれ
>殺されてしまう……云々書かれていました


生け贄は年間の祭りの中でその国の住民の中から選ばれたもので恵み
を与えてくれた神々への感謝を示すために行われるものと、戦争に勝っ
たときの祝賀行事として捕虜を神に捧げ、戦勝をもたらした神を祝うもの
の二種類あったのです。これはアステカの勢力の拡大の過程で、国威発
揚のイベントとして生け贄の儀式を拡大したため後者の方が有名になって
しまいましたが。

>一年間に二万人殺されたとか。
>どちらが本当なのでしょうか?


生け贄の数は1595年頃に書かれたスペイン人神父の本の中では年間6
万人に以上ふくれあがっています。どちらにせよ正確にどのくらいの規模で
生け贄が行われていたか知ることはできませんが、後世の記録になればな
るほど犠牲者の数が増えています。2万人を毎年殺していれば、ちょっと大
きな都市国家が毎年一づつ消えていた計算になりますから、大規模な侵略
戦争のあった年ならともかく(コルテスの決戦の時はいい例です)、通常の
年はまずあり得ない数字です。
著者: 山瀬 暢士
タイトル: インカ帝国崩壊―ペルー古代文明の破滅の歴史

エジプト 創始の話を考える

皆さんはエジプト王家創始の話となるオシリス神話をご存知だろうか。
もしエジプトの歴史に少しでも興味を持った事があるならば
これらの一説を一度か二度読んだ事がある筈だ

オシリスは地上の王となり、イシスを妻にする。
彼は人間に農耕や牧畜を教え、よく治めた。これをねたんだのが弟のセトである。オシリスを箱に閉じ込め、ナイル川に流してしまう。妻イシスは嘆き悲み、オシリスの遺体を探しに出掛ける。
 遺体は地中海に達し、ある地の岸に流れ着いていたという。イシスはオシリスの遺体を連れ帰った。これを知ったセトは、遺体を十四に切り刻んでエジプト中にばらまいてしまう。
 イシスは悲しみにくれながら、バラバラになった夫を探し回っては集めた。とうとう完全な体にし、ミイラの夫に命を吹き込んだという。そしてオシリスの子ホルスを授かるのである。


河北新報社
http://www.kahoku.co.jp/spe/spe114/20020620_04.htm

表現は翻訳者によって違う。
が、この一説はエジプトのカニバリズムの本質的な部分を
ついているのでは無いだろうか

上記の訳は一般向けのかなり柔らかい感じに纏められている。
遺体を十四に切り刻んだ後、実際はこのような文章が続く。

オシリスの男根は、オクシリンコスという魚が食べてしまった

と続く。
このオクシリンコスというのは殺したセトの化身であると言われており
つまりセトは地位を簒奪しその者を食べたという事なのである。

無論エジプトでも飢饉の時人肉を食べたというのは勿論であるが
それ以外に地位の高い人間が死んだ場合
その力を自分の物にする為に好んでそれを食べていたのだ

この風習を嫌った時のファラオが
尊い身分の人間の遺体が暴かれる事を防ぐ為に
食べる事が出来ぬよう? 薬品に漬けて
ミイラ化させる技術を開発したのだという
最も初期の段階ではミイラ化させたのは
人肉を長持ちさせ、長期保存を可能にする為であったのかもしれない

アン・ライスの小説「呪われし女王」には
能力継承の為脳みそを喰わなくてはならないと
重ねて記述している

アン・ライス自身はファラオが遺体を暴かれるのを嫌ったからではなく
強い能力を平民に継承させたく無かったからと述懐して
小説を書き綴っている。

私自身まさかエジプトで人喰いが行なわれていようとは考えつかず
この小説の一説を読んで
真実を求め必死に資料を探し回った経緯がある
八百万の神が居るエジプトには確かに人喰いの神 
女神メウト、ネヘベト が居る
ハゲワシを擬人化した神であるが
メウトは主神アメンラー神の妻であり
この事からも人喰いが卑しい習慣ではなく
かなり価値の高い行為であった事が伺えるのでは無いだろうか

この時期エジプトで珍重されたのはアステカ同様
心臓、脳みそ、性器であったようだ

ミイラが作られた数百年後
日本ではそれらを粉末にし
薬として珍重する事になるのだけれど
これらの話はまた後日に譲りたいと思う



著者: アン ライス, Anne Rice, 柿沼 瑛子
タイトル: 呪われし者の女王〈上〉―ヴァンパイア・クロニクルズ



著者: アン ライス, Anne Rice, 柿沼 瑛子
タイトル: 呪われし者の女王〈下〉―ヴァンパイア・クロニクルズ

アステカ文明と人喰い

来年出版される作家友達のゲラ原稿を読んだ。
先だって発売された「インカ帝国崩壊」では
人喰いについて「専門家に説明は譲る」と
割愛されていたのが
今回は巻末ではあるが、多少掲載されていた。
発売前であるので詳細はお教えできないが
折角であるのでアステカ文明と人喰いについて
一般論的内容を書いてみたい

アステカ文明といえば
神に生贄として奴隷の胸を生きたまま割き
それを祭壇に捧げたという事実が有名である
とにかく彼らに奴隷として捕らえられたら
生きたまま祭壇に並べられてしまう。
と思われていたらしい。
しかしこれは事実であり、
後日それでは効率が悪いと言う事で
奴隷を生きたまま牛馬のように使うようになったという
説もあるが
私が以前読んだある書籍には
生贄とされるのは聖なる人間。選ばれた人間のみであり
むやみに掴まえた人間を生贄にする事は無かったと書かれていた

肉として食べる為に奴隷を太らせて
その後市場で売ったなどという伝承も残っているが
これは嘘であり、アステカの人間には人肉を食べる習慣は
一般家庭的には無かったようだ

征服戦争の最中、アステカの人達は人肉を食べる野蛮人である
といった風潮を強くさせ
「だから征服する事が、キリスト教を布教する事が必要なのである」と
したかった為このような記録が残ってしまったと
考える方が妥当であるようだ

最も、神殿のごく一部
神聖な儀式の一環として神官達が生贄の体の一部を食べる
といった事はあったようだが、これは食用としてではなく
精神的な、一体感を得る為の物であったようだ

神官たちが食べていたのは何を隠そう供物として捧げ終わった後の
心臓であったようだ
心臓の次に次に基調であったのは脳みそで、その次は生殖器であったらしい
また残った体は祭儀の間に人々に食われたという説もある

「殺せば殺すほど世界は安定する」
「神に毎日生きた人間の脈打つ心臓を捧げないと、
 太陽の運行が止まってしまう」

征服した側の記録なので正確さに疑いは残るが
生贄は年二万人から五万人捧げられていたと言う。
上記の理由から考えると一日五十四人、不眠不休で一時間に二人
殺さないと計算が合わないことになる
と、考えると流石に誇張した数字では? と思ってしまうのは
私だけであろう

アステカ文明が華やかしきその頃
エジプトでは生贄を人間から家畜へ切り替えて行ったという

「奴隷を殺したら勿体無いよ……
 いかしておけば色々用途があるのに」

こうした考えが後にエジプトの大ピラミッドを生むのだろうか
そうしたあたりは明日考えて行きたいと思う




著者: 山瀬 暢士
タイトル: インカ帝国崩壊―ペルー古代文明の破滅の歴史

彼女が生きているとしたら

彼女が生きているとしたら

政府が専用機まで用意し持ち帰った横田めぐみさんの骨は
やはり偽物であった

怒りの横田夫妻と双子の弟達のコメントが
新聞各社の一面に踊っていた。

夫が死亡後手元に置きたいと死亡から二年後掘り起こし
焼いたという遺骨。
土葬して二年程度では遺体は白骨化はしていない
余程臭く大変だったろうと思うけれど
夫はその辺りの経緯に付いては詳細説明する事は無かったそうだ

一度焼くとDNA鑑定は困難となる。
実際科学警察研究所は判定不可能と結論を出して居る

焼くといっても例えば野焼きなどで遺体を焼いた場合
百度から二百度の低温となるので
焼いたといってもDNA鑑定は比較的楽なのだそうだ

しかし今回の骨は七百度から千二百度という
日本の火葬場同様の高温で焼かれていた。
警察がお手上げなのに何故帝京大学はDNA検出に成功したのか
使用している器具は同一であるが
検出可能な骨の部位選定が違ったのが
良かったのでは無いかと言われている

北朝鮮の元秘密工作員は今回の結果を受けて
おそらく北朝鮮は

「いや日本の判定が間違っている。
 夫が持っていたのだから北朝鮮の方が正しい」

とコメントするだろうと言っていた。
では悪いのは夫? 愛する妻の骨を日本政府に渡したくないので
他人の骨を渡したのだろうか?

それとも火葬場で取り違いが発生したのだろうか?
ただ土葬が普通の北朝鮮には専用の火葬場は一つしか存在しないから
勤務名簿等々照合すれば犯人はすぐに見つかるだろう。
が、火葬場の人間が他人の骨を渡す必要性があるのだろうか?
常識から考えてそんな事をしてもメリットが無いから
可能性としては低いと考えざると得ないだろう

と、考えると北朝鮮が政府ぐるみで
骨の入れ替えを行なったと仮定するのが普通だろう

骨は二種類の物が混ぜられていた。
私は以前産経新聞のコラム欄で
横田めぐみさんが死亡したのではないかと
思わせる内容を読んだ事があったので
遺骨は本物の可能性は高いのではと思っていた

コラムの内容はかいつまんで言えばこうだ
幼い頃拉致された少女が韓国語を勉強すれば
国に返して貰えると言われ
必死に勉強するのだけれど
結局自分の国には戻れぬ事を知り
絶望の内、自殺したというものである

これは北朝鮮の元工作員の証言の一部であるようだが
実際、横田めぐみさん死亡の経緯は
同様の内容が日朝協議で公開されていた

しかし今回骨は偽物だった。
ということは横田めぐみさんは生きている可能性が高い。
多少の機密が露見したとしても
拉致の象徴的存在である横田めぐみさんが帰国する意味は高い。

彼女は金正男の日本語家庭教師だったという情報もある
逆説的に考えて見よう

彼女は生きているけれど表に出られない状態にある。

のでは無いだろうか

では何故か。
悪まで仮定での話であるが
首をつった所まではその通りであったとしても
もしかしたら彼女は生き残ったのかもしれない。
重い後遺症を残して。

北朝鮮側としては殺すわけにもいかず
表に出すわけにもいかずという状態。なのでは無いだろうか

「首吊り自殺はしてはいかんよ。
 万が一失敗した時重い後遺症が残って
 更に辛い人生が待っているから」

小学校の先生がぼそっと呟いた一言。
あくまで最悪の事態を想定しての話であるけれど

「我々は長年拉致はあると訴えている。
 そしてそれは認められた。
 今、我々は「彼らは生きている」と叫んでいる」

彼女の無事の帰国を心から祈る今日この頃である

ジェンキンス氏無事戻る

ジェンキンス氏無事戻る

「なんとややこしい人生になってしまったのでしょうか」

 北朝鮮拉致被害者の曽我ひとみさんの一言。
 夫であるジェンキンス氏が無事不名誉除隊となり故郷佐渡島にて娘二人と共に会見を行なった。練りに練ったであろう文章は誠意に満ちており、顔は安堵の表情が浮かんでいた。

「北朝鮮で苦労をしてきたのは分かりますが、国からお金などを受け取らないで下さい。日本にはあなた以外にももっと苦しい人がたくさん居るのです!」

 現在北朝鮮拉致被害者には一律一人月三十万円の手当てが出ている。上記の内容はその手当てについて一主婦が曽我ひとみさんに送って来た内容である。こうした内容は一人二人ではなく、激励の手紙に紛れてかなりの枚数彼女の元に届いて居るという。

 誤解しないで欲しい。彼女は被害者であり、その弁済を受ける権利があるのだ。
 
 現在受け取っている金額はあくまで日本政府からの保証であり、拉致した側の北朝鮮からの補償金ではない。こうした点については蓮池透氏がきっちり政府に確認を取っていた。北朝鮮が謝罪のみで補償金を出すのかどうかは現時点不明だが、そうした点からも考えて保証金は当然受け取ってしかるべき物なのである。

 様々な証言から考え見るに、政府は北朝鮮の拉致を知っていた可能性が高い。拉致されていく現場を目撃した男性が「韓国語を話した北朝鮮の人間……」と警察に証言しているのに無視され続けていた事実。国交が無いので無用なトラブルを極力起こしたくない。かくして日本は拉致天国と化し、「一人で連れ去ると煩いのでつがいで連れて来い」といった乱暴な拉致さえも行なわれるようになる。

 国は国民を守る義務がある。
 これはパスポートにも書かれている事であり、国が故意にその義務を怠ったのであるから保証を受けるのは当然の事で上記発言をする女性の方が間違っているのだ。ジェンキンスはどうやら曽我さんは日本語教諭として拉致されたものの、実際は看護婦で役に立たない事が分かったのでジェンキンス氏の連れ合いに選ばれたのでは無いかと証言している。しかしこの発言に異議を唱える人は多く、「何も調べずに、拉致する事があるだろうか」「看護婦と先生を間違える事が?」という人も多い。

 拉致全盛期はとりあえず一人で歩いている人が居れば拉致して来たと言う乱暴な話も多く、拉致の現場を見られたから拉致するという事もあったようだ。私は評論家の意見よりもジェンキンス氏の発言が正しいのでは無いかと思う。北朝鮮の人間はよど号犯もそうだが、自国の人間と他国の人間を結婚させたがらない。そして「生まれた子供をスパイとして使うつもりだった」という発言は「なる程。その手があったかと」改めて曽我さんが北朝鮮に拉致された理由が分かるような気がした。

 二人の娘が通っていた平壌外国語学校は一家族一人の入学しか認めていない。しかし曽我さんの娘は二人共入学が許可された。これは特例というべき事であり、その理由については今まで論じられる事は無かった。「何故ジェンキンス氏にそこまでの特権が?」何故一家族一人かというと家族全員が外国に行く機会を無くすためだという。

 平壌外国語学校はエリート校であり、卒業生は大使などとして海外に出向く機会が多くなる。エリートの脱北を防ぐ為。こうした方針は「私は金正日の踊り子だった」にも一部書かれている。家族全員での赴任が許されず、息子が一人北朝鮮に残されてしまう話だけれども、北朝鮮としては脱走兵であるジェンキンス氏が北朝鮮を出て行く可能性が無いと判断し、二人の娘を優秀なスパイとして育てるべき入学を許可したのかもしれない。

 おそらくは曽我さんの一番の願いは高額な補償金を受け取る事ではなく、家族全員佐渡で静かに暮らす事であると思う。ジェンキンス氏も「一度だけ老いた母親に会いにアメリカに行きたい」と語っていた。佐渡では英語教師としての職も用意されているとも聞く。曽我さんが新年を静かに迎えられる事を私は心から「ご苦労様」といいたい。ややこしい人生はこれで少しは修正されたのだろうか。北朝鮮拉致問題終結にはまだ時間がかかると思うけれど、次なるステップに向けて政府関係者の皆様各位、ぜひとも頑張って頂きたいと思う。






著者: 申 英姫, 金 燦
タイトル: 私は金正日の「踊り子」だった〈上〉

北朝鮮亡命者連行事件を追う

北朝鮮亡命者連行事件を追う

 今月八日、日本中を震撼させる映像がテレビを流れた。瀋陽日本総領事館に五人の北朝鮮の人間であると思しき二人の男、二人の女、そして二歳の子供が駆け込んだのだ。結果は何度も映像として流されたが、二人の女と子供は門を入った所を取り押さえられ、先にビザ発給事務所に駆け込んだ二人の男性も武装警官の手によって連行されていってしまった。何度も再生される映像にはノンビリとポケットに手を入れ歩いて女性の下に行く男性の姿と、武装警官の帽子を拾い集める副領事の姿が写し出されていた。この日領事は大連で発生した航空事故の為不在であり、首席領事は休暇で日本に戻っていたのだと言う。

 つまりこの帽子を集めていた人間がこの時点での領事館の最高責任者であったのである。

 主権侵犯と言う言葉が新聞紙面を華やかに彩る。一般的に領事館の中は例えそれが中国・国内に建築されていても、日本国と同じ扱いとなる事は一般的に知られている。武装警官はあまつさえそれを犯し、ビザ発給事務所内にいた男性二人さえも連れ去ったのである。ここまでをただ単に聞けば「中国側は何を考えているんだ!」と思う人も少なくないと思う。しかし今回の問題は主権侵犯と言う言葉だけで片付けられない様々な問題が隠されていると思う。

 まず一番最初、何故亡命者五人が北朝鮮から中国へ逃げてきたのか、と言う理由について考えてみたいと思う。これは亡命者の手にしていた書簡によると、北朝鮮における生活環境の悪化が重要な問題として上げられるようである。彼らは”迫害”と言う言葉を持って自分達の環境の変化を表現していたが、政治難民であるか、飢餓難民であるかは重要な問題である為彼らの書簡が全て真実を語っているとは到底思えない。

 北朝鮮はここ数年飢饉が続いており、一日三食食べる事さえも困る事が多数発生していると言う事は日本に対しても米支援などを求めている事などから記憶に新しい。彼らはまず北朝鮮から川を挟んで陸続きである中国へと渡った。彼ら一族は既にアメリカや韓国に亡命している既成事実があったそうだから、頼る先がしっかりしている彼らとしては自由主義国家への魅力は耐え難い物であった事が想像できる。

 一族で亡命を行う事は北朝鮮においては連座制による罰が与えられるからであると想像する。彼ら一族の人間は一人だけ北朝鮮に残っているそうだが、その人間はすでに拘束されているとの情報もある。過去の北朝鮮関連の書籍にも連座制による悲惨な状況が描き出されている。逃げるなら全員で、順番に。彼らの頭にはおそらくはそんな考えが当然の事ながら浮かんでいたに違いない。

 北朝鮮の国境の川を渡った先の土地、それが今回の現場となった瀋陽であった訳である。

 この土地に日本の領事館が存在する事も北朝鮮と隣接する土地である事と無関係では無い。北朝鮮の情報収集の為日本領事館の隣にはアメリカの領事館が存在する。ここで一つの疑問が存在する。何故彼らは隣の自由主義国家である韓国を目指さず、中国を目指すかである。これは韓国が北朝鮮との関係を理由に、第三国経由以外で難民受け入れを拒否しているからである。

 結局は隣の国韓国に亡命するにはしても、一時は第三国を経由しなければ受け入れて貰えない。しかし中国に逃げ込んだ所で、中国側は北朝鮮からの亡命者を難民と認定しない上、北朝鮮との関係悪化を防ぐ為亡命者を発見した場合即北朝鮮へと強制撤去と言う手段を取っている。現在中国側に潜入しているこうした亡命者の数は三万人とも十五万人とも言われている。人道論云々ではなく、中国側としてももし一人でも中国経由での亡命を受け入れてしまった場合、莫大な費用及び被害を蒙ってしまう可能性がある為例外を作るわけにはいかないのである。

 では何故彼らは日本領事館を選んだのか。彼らは本当はアメリカへの亡命を希望していたのだが、その日アメリカ領事館の門は閉じられており、小さな子供連れの彼らはその高い門を越える事が出来ないと判断したからであると言う。これは事前に打ち合わせされており、急遽予定を変更して、毎日・一メートルから六十センチ扉が開いていた日本領事館に駆け込んだと言う事のようなのである。

 では何故カメラが用意されていたのであろうか。カメラマンは「亡命が成功しても失敗してもその事実が闇に葬り去られないためには危険を承知でメディアに協力を得る事は必要である」とコメントしていた。闇に葬り去られる? 日本は基本的に難民を受け入れない国である。すこし穿った考え方をすると、今まで日本領事館に駆け込んだのだが、今回のように武装警官の手によって連れ出された人間が存在していたので、今回は日本側が言い逃れできないように映像を撮ったとも考えられるのである。

 これらの事は全くの想像の話となるのであろうか。五月十三日発売の東京新聞においては日本領事館においては、身元不明者の亡命は一切認めないと言ったマニュアルが存在するとのニュースを掲載していた。もしかしたら日本領事館は「事なかれ主義」として今までも何度もこのような事件が発生した場合、武装警官に亡命者を渡していたのかもしてないのである。

 中国側も「日本側は領事館の立ち入りを許可し、謝礼まで言っていた」と発表している。無論このような事はあってはならない事であるし、もし万が一でもそうであったら、今までの日本の抗議は一体何だったのであろうか? 国際的にも最悪の形で評価される事は間違い無い。五人を引き渡す際、副領事は北京の大使に電話連絡を取ったそうだが「無理はせず、引き渡す事もやむを得ない」と回答したそうである。対立する日中の主張。今回の問題はそう簡単に解決する事は難しい事であるようである。

 週が変わって五月十三日、瀋陽の日本総領事館で通常のビザ業務再開された。これまでのように門を開けたままではなく、アメリカ同様、正門を完全に閉鎖したまま、武装警察官と中国人警備員による身元確認などを終えた後、入門する方式に変更された。何か解決方法が根本的に間違っていると思うのだが、川口大臣は至極真面目に「警備上の問題があった為」とコメントを出していた。

 又、もし最悪北朝鮮に送還されたとしても、現在は亡命者の数が増えてきた事もあり、即死刑と言う事はまず無いようである。強制施設に入れられ、もし生き延びられた場合は北朝鮮の元の場所に戻される。強制施設の環境は劣悪である為子供達は生き延びられない。とアメリカに亡命した女性は語っていた。

 危険を知り、失敗者が出ているのにも関わらず、現在瀋陽の各国領事館には亡命者の数が後を絶たない。国際問題化する事は必死の情勢である。そうした中日本はどうした立場になっていくのであろうか。今年は日中国交正常化三十周年記念の年となっており、中国が大好きな筆者としては、今後の中国との良好な関係を続ける為にも、日本政府の断固たる態度を心から望む今日この頃である。

歯は口ほどに物を言う ~北朝鮮拉致問題の一つの真実

歯は口ほどに物を言う ~北朝鮮拉致問題の一つの真実

 小泉総理の歴史的な訪朝から、拉致被害者の帰国。
 連日ワイドショー、ニュースを含め様々な報道が為されている中で、何が真実で何が言わされている事なのだろうと考える事が多々ある。

「彼らはこうして二十五年の長きに渡り生き抜いてきたのだから、真実を語らない事について我々がとやかく言うことでは無い」

 北朝鮮からの日本人妻が帰国した際、”家にテレビが無い”と発言しただけで、大問題となった話は有名であるが、北朝鮮に戻る事を考え、そう簡単に彼らが真実を語る事は無いだろう。それは自分自身の体及び家族を守る為至極当たり前の事であり強制すべき事では決して無い。

 飛行機のタラップから降りてきた浜本富貴恵さんの笑顔を見た時、日本人の誰しも安堵感を覚えたのでは無いかと思う。屈託の無い笑顔に私もかなりホッとした。と同時に気になる事があった。彼女の口の中に歯が少なくとも一本無かったのだ。

「急に帰国が決まったので歯医者に行けなかったのよ」

 後日彼女は友人にそう説明したと言う。タラップからはその後続々と拉致された人達の姿が見え、最後には確か唯一夫婦で帰国と成らなかった曽我ひとみさんが降りてきたと思う。笑顔で手を振る彼女の歯も酷かった。男性の拉致被害者が比較的綺麗な歯並びをしている事に比べ、女性の歯並びが酷かったのだろうか。

 まず一つ上げられるのは女性は閉経などにより骨を作るバランスが崩れ、破壊のスピードに形成が追いつかなくなり、男性よりも脆くなっている事が考えられる。女性は若い頃からカルシウムとビタミンDを多く含む食材を定期的に取る事によりこうした現象を最小限に食い止める事が可能であるが、おそらくは”北朝鮮では最高級の暮らしをしている”と揶揄される彼らの生活とて決して甘くは無い事が歯を見る事で想像される。無論それだけで歯が悪くなってしまうとは到底考えられないが。

 脱北者の体験談などを紐解くと、歯ブラシは何年も大切に使う事が当たり前であり、歯磨き粉などは殆ど存在しないのだと言う。日本の昔話などでは歯を川の砂で磨く話が出て来るように、物が無い、食糧不足で歯磨き用品にまで手が回らない訳では無く、元々歯ブラシで磨くと言う習慣が無い為に、余り出回っていないと言う事も十分に考えられる。

 中国の偉大なる指導者故毛沢東主席の回顧録には専属医の指導で何度も歯をブラシで磨くように言われたのにも関わらず、「虎は決っして牙を磨かない。それなのに虎の牙は何故鋭いのか」と食後にお茶で歯を漱ぐだけの生活習慣を止めることは無かったと言う。これは中国の農民などに伝わる一般的な歯の洗浄方法であるそうだが、結果歯なみは黒ずみ、抜け落ち、1970年初頭には既に上側の歯は全て抜け落ちて無かったと言う記録が残っている。

 歯が抜け落ちてしまった原因は美食と歯の管理を怠った事であったと考えられている。
 しかし我々の記憶や写真に残る故毛沢東主席の写真に”歯が無かった””黒かった”と言う印象は無い。その理由は簡単だ。口を開いて居る写真を見る事が少ないからに他ならない。熱い上唇が口の中を覆い隠していたのだ。人は口を閉じていた方が集中力が増し、大きな力を出す事が出来るのだそうだ。しかし近年普通に立っているだけでも口を開いたままで居る子供が増えて居ると言う。

 これは赤ん坊の頃に加えるオシャブリの習慣が残っているからだと言う学者も居る。口を常に半開きにし、口で呼吸を行う。統計結果によると日本人の子供の約半数がこの傾向があるのだと言う。その結果として出っ歯となり免疫力が低下する。単純に口が開いていれば中が見えるであろうし、テレビなどでアップになれば中を覗かれても仕方が無いと言えるのかもしれない。思い出してみると浜本さんは確か記憶に残る出っ歯であったと思う。

 バランスの取れていない栄養と管理不足による歯の欠落。歯が一本欠けるだけで噛む力は通常の六十パーセント程に成ってしまうと言う研究結果も近年発表されている。最上級の生活をしている彼らが今の状態であると考えると、その下の”成分が悪い”と言われる日本人妻達の生活はどうなっているのだろうか。今年の冬は越せるのか? 手遅れにならないのか? 疑問は膨らむばかりである。

 人の口を無理矢理塞いでも長い年月の結果として見えてくる物がある。今後事件の真相が解明されるに連れ、時間はかかるかもしれないが、想像だけでなく彼らの閉ざされた口から貴重な情報を聞き出す事が出来るのかもしれない。一方的な報道だけで無く事件全体を見詰めて。拉致家族の皆様の幸せを心から祈りたいと思う。



世界一のジャンパニスト

 世界一のジャンパニスト

 今月末を持って第二子出産を終え早半年が過ぎた。
 一人目の時と比べ時間の過ぎ去るスピードは思いの他早く、トラブルも少ないような気がする。

 勿怪の懸案事項であった体重は二ヶ月前に元に戻り、現在は元の体重マイナス五百グラムを突破し体型はほぼ元に戻って来た。出産後に一番戻らないのは胸からウエストにかけてのアンダーバストとヒップラインでは無いだろうか。最近の統計結果では出産によりウエストは平均で三センチ以上大きくなり固定してしまうのが普通であると発表されていた。かく言う私は第一子出産の際はこのアンダーバストの部分が五センチも伸び固定してしまった……今回はかなり体型保持には気を使い、メンテナンスを繰り返したお陰か中々満足の仕上がりである。ウエストラインを強調させたミニスカートをはいても下腹部は補正下着無しですっと真っ直ぐ引き締まっており、その辺の女子大生と比べても決して遜色は無い。

「私もまだまだイケル!」

 これなら夏はビキニを着て娘と海に行かれそうである。

 体型に関係なく色々な服を着られるというのは人間にとって幸せな事であると思う。しかし私が知る限り、お金を大量に持っているのにも関わらず、公式の場にいつも地味なジャンーパーを着続けている人物が居る。

「金正日総書記は国民全てが幸せになるその日まで古いジャンパーを着続けると言っていますので、国民はくれぐれも新しい生地など送って来ないように」

 拉致疑惑によりワイドショーに頻発に登場するようになった金正日総書記。金正日は何故いつもジャンパー姿なのだろうか。本当に生地など送っている人が居るのだろうか。普段着のように公式の場で着ているベージュ色のジャンバーはすっかり金正日のトレードマークと化している。何故ジャンバー? テレビにその姿が映し出される度に私は頭を傾げてしまった。

「金委員長は人民服とジャンバーをよく着る。その理由は素朴に見えるためだ」

 脱北した元軍幹部はその理由をこう語る。
 確かにキンキラキンのステージ衣装を着るよりは真面目そうに見えるような気がする。しかし真面目そうに実直そうに見せるのであれば、スーツ若しくは将軍様と呼称されているのだから軍服が良さそうな物だが、こうした服を着ている姿は部屋などに良く飾られている少女漫画のようにデルフォメされた肖像画以外に見た事は無い。

 しかし記録によると少なくとも大学時代までは好んで背広を着て居た事があったと書かれている。青年期から壮年期になるにつれどのような心境の変化があったのだろうか? 大きな心境の変化として考えられるのは、丁度その時期に金正日総書記は父、金日成に次期指導者として指名されている。

 一説には金日成に対し金正日が背広を着るよう促した際、

「私が戦闘服として人民服を人前で着ますので、是非主席は若く見える背広を来て下さい」

 と説得した為、と言う説も捨てきれない。しかし確かにジャンパーの次に金正日総書記がよく着ているのは人民服であるが、あれはどう間違ってもジャンパーでは無い。

「ジャンパーは着やすいし、働くにも便利。ジャンパーは私の気性に合います」
 
 幹部が金正日総書記に背広を着るように勧めた際、笑ってこう答えたと言う記事が北朝鮮政府機関紙・民主朝鮮の二〇〇一年七月五日付号に掲載されていた。

「私は一生、ジャンパーを着続けます!」

 と言う金正日総書記の言葉に幹部は「勲章一つ付けないジャンバーは質素・倹約の象徴であり、これこそ社会主義国家の将軍に相応しい衣装である」と締めくくっていた。

 質素の象徴? 素人が見ても分るように金正日総書記が着ているジャンパーは体型に合わせ作られた特製オートクチュールであり、巷で安く買える大量生産品とは明らかに違い、毛羽立った使い古しのジャンパーを着ている所は見た事が無い。何年も着ているのに常に新品、同じ色合い。でもポケットの位置は微妙に違う。布地はもしかしたら上質な日本製である可能性も否定できない。なぜなら金ファミリーが使用する部材は一号物資と呼ばれ、多くは日本から万景峰号に乗せ調達されているからである。又、ある筋からの情報によるとそれは東京神田で製造されているとも噂されている

 建前云々だけでは答えが中々見つからない。逆説的に考えてみよう。

 私がジャンパーを着る時は寒い時、そして……考えてみれば妊娠していて太っていた時期、普段着ていたコートに肥大化したお腹が入らず、学生時代に着ていた古いジャンパーを着ていたような気がする。ジャンパーを上に着ていると外見かなりごまかしが効き、目から見える下のラインが真っ直ぐになる為、体型が崩れていてもかなり気楽に出かけられたような気がする。もしかしてこれは……

「金正日総書記はとてもお洒落な方です。日々外見をかなり気にされています」

 金正日総書記は妙に長いスラックスを履いている。これはマジックブーツを隠す為であるという説はインターネット上では既に常識となっている。あるサイトではズボンの折れ目具合や人体の体型比率からその長さを十五センチとハジキ出して居た。一説によると金正日総書記がパーマをかけている理由は若い頃は低い身長をサポートする為であり、年を取ってからは少なくなった頭髪をより多く見せる為である。と言われている。

 殊身長については

「父親の金日成と並んで立った時そのままでは必然的に低くなってしまい見劣りがするので、仕方なくマジックブーツを履き続けていたのでは無いか」

 と言う説もあるが、ヒールを普段履き慣れている女の目から見ても、十五センチのヒールを履き生活する事は決して楽な事では無く、履いている本人に確固とした意思と信念が無ければ続かないと思う。金正日総書記は慢性的な運動不足であると言うが、あれだけ高いマジックブーツを履き運動をする事は至難の業であり、見た目を気にするのであれば仕方の無い事であるのかもしれない。

 金正日総書記は北朝鮮の象徴とも言うべき重要人物である。よって健康管理などは国家的プロジェクトとして食生活から生活習慣、排泄物に至るまで厳重に管理される。マイナスイオンが身体に良いと聞けば裏の山から専用のチューブを引き、北朝鮮では滅多に取れないアシカが身体に良いと聞けば、海軍は演習よりも優先順位を上げアシカ確保に全力を尽くす。万が一でも金正日が一番必要としている重要部位に手を付けた場合は即刻死刑であると言う。別段精力絶倫にした所で健康にはあまり関係無いと思うが、「精力こそ若さの証」と真面目に考えているのかもしれない。

 国民一丸となっての奉仕により、見た目肌の色は艶々で壮健そうであり、実年齢よりも若く見える。しかし中身は長らく糖尿病と脂肪肝を患い、決して健康と呼べる身体では無いと言う。原因は若かりし頃年間千本近く高級ブランデーを飲んでいた事では無いかと言われている。回りの人間が必死に健康管理を行おうとも、本人が暴飲暴食を繰り返しては何の意味も無い。亡命を果たした金正日総書記の養女であった人物は「ウンチみたいな体形」と良く自嘲していたと証言している。

 確かに写真でその姿を見る限り特製ジャンバーで誤魔化されて居るが、よくよく確認するまでも無くかなりお腹が出ており、わざわざ証言を引用するまでも無く「ウンチみたいな体形」である事が分る。

 この女性は金正日総書記はこの下腹の膨らみを気にし、毎日欠かさずプールに入りダイエットに勤しむ事に余念が無かったと別の機会でも証言している。お洒落をする事よりも、下腹を隠す事の方が金正日総書記にとっては重要事項であるのだろうか? 真偽の程は不明だが、運動不足を補う為に現在は執務空間のあちこちに階段が設けられ、一日自然に歩いているだけで運動が出来るよう配慮されていると言う。

「体型隠しの為だったんだ……」

 何だかそう考えると一番納得できるような気がした。

 男性の下腹が大きく膨れ上がる「リンゴ体型」は脂肪が身体に溜まったからだけでは無く、体内脂肪が増え内臓が身体の上部に留まりつづける事が出来なくなった為に発生する。内臓脂肪型肥満は見た目が悪いだけではなく動脈硬化を起こし、心筋梗塞や脳卒中などを起こす可能性が高くなり、非常に危険な状態なのである。運動を嫌う金正日総書記の為に日常生活の中で自然に運動出来るよう、階段などをあちこちに作り、成人病対策を行って居ると言う話も聞いた事がある。至れり尽くせり。しかし糖尿病は一度発病すると治らないそうだから、もはや全ては手遅れなのであるのかもしれない。

 この夏、金正日総書記は半そでの人民服姿で過ごすのだろうか。とりあえず体型に対するコンプレックスの無くなった私としてはウエストとバストラインをより強調した、露出の多いワンピースを着て街中を闊歩し、生きている幸せを謳歌したいと思う。



少年A

少年A
佐川 一政 (著)
価格: ¥1,470 (税込)
単行本: 202 p ; サイズ(cm): 19 x 13
出版社: ポケットブック社 ; ISBN: 4341141341 ; (1997/09)

目次
第1章 一四歳の"僕"
第2章 少年Aは誰だ―透明人間の犯罪(少年Aはどこからきたか)
第3章 酒鬼薔薇君への手紙
第4章 緊急鼎談 「少年Aの心の中」(天使の共犯闇がない)

現実世界でも少年Aは無事一般世界に戻ってきたけれど
これは人喰い本というよりも
完全にエッセイだと思った方が良いかもしれない。

日本を代表するカンニバルキラーが少年に送ったメッセージ。
もし行く所が無ければ僕の所に来ても構わない。
パリで散る筈だった命。
殺されても別段構わない。
といった内容は少々ドキッとした

少年Aが出獄した際
小説家になりたいと回りの人間に漏らしていたそうだけれど
それは本当になりたかったからではなくて
それはもしかしたら佐川氏の声が
彼に届いた事を伝えたかったからなのかもしれない。

佐川氏は完全に贖罪を終えたのではないか
この本を読んで私はそう思いました。




著者: 佐川 一政
タイトル: 少年A