鳥葬について、あなたはどこまで知っていますか? | 正しい人の喰い方マニュアル

鳥葬について、あなたはどこまで知っていますか?

このブログでも何度か触れたけれど
「鳥葬」に関しては遭えて、先だっての人喰い本では触れなかった。


テレビで一度だけ「鳥葬」シーンを見たことがあるが
あれは「外国人には見せてはいけないもの」ということで
そう情報が日本に入ってくることは無いのだ


今まで取り上げたのは


「ハゲワシは人の尻から人肉を食う。簡単につっつくだけで腸が露出し
 食べやすいからだ」
「化学調味料の影響か最近の人肉はまずくて、ハゲワシの喰いが悪い」


であろうか。他にもあったかもしれない。


今回は旅関連の書籍を探していて
たまたまたこの「鳥葬」に立ち会ったという日本人の本を発見した。
非常に興味深い内容なので今回はご紹介したい。

*文章はあちこち中略。詳細は書籍を読むことをお勧めする


アジアン包 作者 遠藤ケイ


遠藤 ケイ
アジア包〈上巻〉
遠藤 ケイ
アジア包〈下巻〉

*男性である。現在千葉在住。

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地上に夥しい数の死者の衣服が散乱している。
男物、女物、子供の服もある。
長い黒髪が岩に張り付いている。死体は鳥葬師の手で切り刻まれ、肉や内臓はあらかた
ハゲワシに食い尽くされて跡形もないが、よく見ると石塊に混じって骨のカケラや爪が残っている


死臭と血の匂い、鳥葬師が振り下ろす刃物が肉を切り、骨を断つ音、匂いを嗅ぎつけて
何百羽と群がっているハゲワシの殺気立ったうめき声。
恐れに震えながら地面にふれ付して祈る縁者たちの低くくぐもった読経の声。
そうした幻影がホロスコープのように現出して動き始める。


鳥葬はチベットに仏教が入り込む前から行われていた。
古くは犬葬もあった。
かつての鳥葬は死体を鳥葬場に杭で組んで立ち去り
それを空の王者たる猛禽類のハゲワシが食う。

犬葬は死体をただ山に置き去りにし
野犬が食って処理をする。

全ては人為的というより、
自然界で日常的に行われていることを儀式として取り入れたものだ。


鳥葬は専門の鳥葬師によって行われる。
死体は屈んだ姿勢で頭陀袋に入れられて運ばれてくる。
巨大な岩盤にたった鳥葬師が刃渡り七十センチの鉈と三十センチの包丁を手にする。
既に死臭と気配を嗅ぎ取った夥しいハゲワシが遠巻きに囲んで鳴き騒ぐ。


死者の解体が始まる。
硬直している死体をうつぶし、背骨に沿って縦に包丁が入れられる。
尻と腿の後、ふくらはぎを切る。
皮膚の下に白井脂肪の層がぱっくり口をあける。
強い脂肪の匂いと死臭がたちこめる。


死体を仰向けに戻し、肋骨の下から腹を切り裂く。
血に染まった内臓を切り分けて出す。
頭と両手両足を切断する。
肋骨を包丁で叩き割る。
食べにくい足の裏の肉は薄く削ぎ切る。


ハゲワシが一斉に群がってくる。
鋭い嘴と爪で肉が食いちぎられ、長い腸や内臓が引きずられる。

切断された頭が転げまわされ
眼球が抉られる。
凄惨な争奪戦が繰り広げられる。


人肉があらかた食い尽くされると、鳥葬師がハゲワシを追い払う。
残った骨などの処理が始まる。
肋骨を削り、硬い腰骨や大たい骨を杵で砕く。
頭は食べられない髪の毛を問う日ごと削り落とし
頭蓋骨を杵で砕く


脳みそが飛び散らぬように取り出し
ツアンパをまぶして放り投げる。

死体の痕跡は殆ど残らない。


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非常に詳細な的確な文章。
「鳥葬」について今後もこれほど詳細な文章を残す人は
現れないかもしれない。


犬葬というのはこの本で初めて知った。
これについても時間があれば調べてみたい


この他この本には
血を一滴もこぼす事無くやぎを解体する方法など
非常に詳細な筆致で書かれている。
おもしろい。良書、是非読んでいただきたい一冊である。